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蜃気楼が見えそうな猛暑の夜。
窓の縁から身を乗り出して夜空を眺める少女。
髪をかきあげながら少女は、
「……満月か……」
穏やかな声でポツリと呟いた。
自然豊かな土地。
それがこの景色を見た者の第一印象であろう。
夜である為、黒い山並みであるが、昼間にこの景色を見ればただただ視界には緑が広がるのみ。
外からは虫の合唱が聞こえてくる。
黒い景色からはいくつかの小さな光が漏れてくる。恐らくは蛍であろう。
窓を閉めて、もう一度夜空を見上げる少女。
少女の顔は美しいの一言に尽きる。
色白の顔に埋め込まれた瞳は漆黒の黒。頭髪もそうである。程よい大きさの鼻梁と貝を思わせるような小さな口。体つきが小柄で、彼女を幼く感じさせるが、充分に人目を引く美貌である。
年は十五、六であろうか。