マンサー51
アシュタルの視線と羅刹の視線があう。
(……確かに、今はその事を考えなければ)
羅刹は月夜に向き直り、
「月夜、正直に言って、この街の防衛力で軍の攻撃を防ぎ続けるのは難しい」
率直な意見を言った。月夜も羅刹の方に向き直り、羅刹の眼を見る。
「じゃあ、どうすれば……」
「残る手段は脱出だ」
羅刹は一度、言葉を切って、
「戦闘開始前からアシュタルが言っていたが、軍の波状攻撃をしのぎきったあとでの脱出が最も成功率が高い。しかし、この軍を指揮している人間は恐らく、波状攻撃は仕掛けてこない」
羅刹は強い口調で月夜に告げた。
「なぜ、そう言える?」
アシュタルは腕組みをしたまま羅刹に問い掛ける。
「相手の性格は、先程の手合わせで大体わかった」
あのセインという男、魔法騎士であるにも関わらず、呪法を発動させたのは僅か三回。しかも、自分以外の人間に攻撃したのはたったの一回。それも止むを得ず、だ。あれほどの名を馳せる男ならばもっと強力な呪法も発動できたはず。それこそその気になればあの店一帯を吹き飛ばすことも可能だったはずだ。
自分が奴に呪法を使わせないように接近して戦ったのも原因の一つだろうが、できるだけ犠牲を出さないように戦っていた、と羅刹は推測する。