ミンサー
「周囲をしっかり監視しろ。恐らくその中には『死霊使い』はいないはずだ。万一いたならば強力な攻撃型の精霊か、熟練の騎士がいるはずだ。他の兵達とは明らかに攻撃の質が違うから、そういった攻撃を見たらすぐに報告しろ」
セインは部下にそう命じた。
これは恐らく、おとりだ。他の門から『死霊使い』を逃がす為に注意を引く、決死隊だろう。『死霊使い』をあんな危険な場所に出すわけが無い。
しかし、その判断が誤りである事に、彼は後に気付くことになる。
「全員突撃っ!」
隊長の命令によって全兵の内、七割が正門から討って出た。凄まじい気迫で斬り進む彼等を前に、軍の兵士達は慄いた。セインの直々の兵では無い彼等に使命感はない。そしてバーグスが無能ぶりを発揮し、命令できない為に指揮系統は乱れていた。
馬に乗りながら、羅刹とアシュタルは正門から討って出た兵達に紛れていた。
羅刹やアシュタルが一気に蹴散らせばいいのだが、そうすると月夜がここにいるのが軍に知られてしまう。
羅刹は屍を築いていく兵達を眼前に、馬の手綱をぎりぎりと握り締めていた。