ウウ
セインが周囲の監視を兵に命じてから三十分が過ぎようとする頃。
「報告します。『死霊使い』らしき人物が正門から突破したとのこと」
再び三人の前には、部下が報告に来ていた。
(……どういうことだ?あの『鬼神』羅刹がこんな作戦を取るとは思えんし……軍の情報操作か?)
砂漠に展開している兵はセインの部下達ではない。意図的に情報を操作していることもあり得る。
(……それとも、裏の裏をかいて、正門から突破……だが、そんなリスクの高い作戦を奴がとるとは……)
思考に耽るセイン。しかし、その思考は、
ガアァァァァァンっ!
一つの轟音で掻き消された。これは……
「ご報告致します、正門の方角から凄まじい衝撃波が走ったと……」
駆け込んできた部下の言葉をそれ以上聞かずに、セインは剣を片手に走り出す。
それに続いてユートとサンも駆け出した。
「くそっ!なんという事だっ!」
完全に裏をかかれた。正門から突破などというリスクの高い作戦を奴等が取る訳が無いとたかをくくっていた。しかも正門はバーグスの『正門から討って出る訳が無い』という意見で、セインの『万一に備えて、ある程度の兵力を集めるべき』という反対にも関わらず、八方位中最も布陣が薄いのだ。しかも指揮官はそのバーグス自身だ。これでは簡単に突破されてしまう。今から飛翔呪法を用いて奴等を追っても、恐らくはあの『死霊使い』の側近達が出て来て、足止めされ、結局は逃げ切られてしまう。
慌しく出撃しようとするセインを、
「隊長、伝達呪法がノアールから届きましたっ!」
一人の部下が呼び止める。
ノアールとはこの周囲の村の名だ。その言葉を聞き、一瞬足を止めるセイン。
「……これで希望が出てきた……!」
その顔にはうっすらと笑みがこぼれている。
「お前達は撤退を始めろ。俺とユートとサンは『死霊使い』を追うっ!」
セインはそれだけを部下達に告げると飛翔呪法を発動させ、二人と共に飛び立った。
「うまくいったようだな」
アシュタルは淡々と呟く。