サマンサ
アシュタルは月夜の両手を振り払い、前方で身構えている暗殺集団に再び左手を向けた。
眩い閃光が前方の五人を包み込もうとしたまさにその時。
光は見えない壁に激突したかのように爆散した。凄まじい衝撃が城内の壁を破壊する。
「間に合ったか……よかった」
現れた白いローブを纏った青年は安堵した表情で部下達の顔を見つめた。
「ユートさんっ!」
彼らも頼もしげに後方を振り返りながらその名を呼ぶ。
アシュタルは新たに現れた二人組を凝視した。
ユートとその精霊サンである。
「今のうちに逃げろ、月夜」
アシュタルは月夜の方は向かずにそう告げる。
自分がこの場にいても足手まといにしかなれないことを知っていた月夜は、
「無理だけはしないでね」
それだけ言うと奥の部屋に走り去っていった。
月夜の足音を聞きながら、アシュタルは続けざまに呪力を発動させる。
辺り一面が灼熱の炎に包まれる。しかし、それらの攻撃は全て見えない壁に阻まれた。鈍い衝撃音と共に、呪力が拡散される。
(……防御型か、回復型の精霊か)
アシュタルは内心で舌打ちした。正直に言って、防御型の精霊は自分が最も苦手とする相手なのだ。しかも、自分の呪力を完全に拡散させるだけの結界を張れる精霊とは、まだ戦った経験がアシュタルにはない。
さてどうしたものか。ほんの一瞬、アシュタルは思考に耽った。その一瞬が取り返しのつかない事態を引き起こす。
先程の攻撃の隙に飛翔呪文で宙に舞っていたユートが、アシュタルの遥か頭上で杖を振り下ろそうとしていた。その杖は淡い光に包まれている。
ユートが杖を一閃させると、衝撃波がアシュタルを襲った。アシュタルも呪力を発動させて、ユートの衝撃波を自らが放った衝撃波で相殺させる。
しかし、その隙に残る五人の暗殺者はアシュタルを素通りして奥の通路に抜けようとしていた。
「させるかっ!」
叫びと共に、暗殺者に攻撃を仕掛けようとするアシュタルだったが、その代償をアシュタルはすぐに払う事となった。